バヌアツの文化と暮らし|Kastom・Kava・Nakamalをわかりやすく解説
バヌアツの文化を知るうえで、まず覚えておきたい言葉があります。
それが「Kastom(カストム)」です。
Kastomは、単なる「習慣」や「伝統」ではありません。
祖先から受け継がれてきた知識、儀礼、土地との関係、人とのつながり、社会のルールなど、バヌアツの人々の暮らしを支える幅広い考え方です。
そして、そのKastomを知る入口の一つが「Kava(カバ)」と「Nakamal(ナカマル)」です
この記事では、Kastomとは何なのか、KavaやNakamalが暮らしの中でどんな役割を持っているのか、さらに旅行者が知っておきたい文化的なマナーまで紹介します。
バヌアツの人口・島・言語など、国全体について知りたい方は「バヌアツとはどんな国?」の記事もあわせてご覧ください。

Kastomとは?

Kastomを単純に「伝統文化」と訳してしまうと、少し意味が足りません。

ぼくなら、「祖先から受け継がれてきた、暮らしや社会のルールそのもの」くらいに理解しておきます。
Kastomには、儀式、踊り、衣服、土地との関係、村のルール、物語、伝統的な知識など、さまざまなものが含まれます。
Vanuatu Tourism Officeも、Kastomを単なる習慣ではなく、「バヌアツの人々の暮らし方や価値観を形づくるもの」と説明しています。
ここで覚えておきたいのが、「バヌアツのKastomはこれです」と一つにまとめられないことです。
バヌアツでは、島によって言語や歴史、儀礼などが異なり、それぞれの地域に独自のKastomがあります。
つまり、タンナ島のKastomと、ペンテコスト島やアンブリム島のKastomが、まったく同じというわけではありません。
「バヌアツ文化」という大きな枠の中に、島やコミュニティごとの文化がある。
この感覚を持っておくと、バヌアツの文化をかなり理解しやすくなります。
Kastomは「昔の文化」ではない

Kastomという言葉を聞くと、「昔ながらの暮らしを続けている人たち」というイメージを持つかもしれません。
でも、Kastomは博物館の中だけに残された過去ではありません。
現在のバヌアツ社会にも生きています。
スマートフォンを使い、車に乗り、学校や会社で働きながら、家族や土地、儀礼、コミュニティではKastomを大切にする。
そうした現代の暮らしとKastomが共存しています。
Vanuatu Cultural Centreでも、Kastomは単に記録・保存するものではなく、コミュニティの中で維持し、次の世代へ伝えていくものとして扱われています。
つまり、「伝統か近代化か」という単純な二択ではないのです。
Kava(カバ)とは?

バヌアツ文化を知るときに、よく登場するのが「Kava」です。
Kavaは、コショウ科の植物「Piper methysticum」の根から作られる伝統的な飲み物です。
根を砕いたりすり潰したりして、水と混ぜて作ります。
アルコール飲料ではありませんが、リラックス感をもたらす飲み物として知られています。
味は土っぽさや苦みがあり、独特です。
ただ、Kavaの面白さは味そのものだけではありません。
Kavaは「飲み物」以上の存在

Kavaは、バヌアツ社会の中で文化的・社会的に重要な役割を持っています。
結婚式、葬儀、歓迎、コミュニティの集まりなどでも使われ、人と人との関係をつなぐ役割を果たしてきました。
現在でも、仕事を終えた人々がKavaを飲みながら時間を過ごす文化があります。
日本で無理やり近いものを探すなら、
「仕事が終わって、一緒にお茶や酒を飲みながら話す」
感覚に少し似ているかもしれません。
ただし、Kavaは儀礼やKastomとも深く結びついています。
そのため、単純に「南国のお酒」と考えるのは違います。
Kavaは「何を飲むか」だけではなく、「誰と、どこで、どのように飲むか」まで含めて文化なのです。
Nakamal(ナカマル)とは?

Kavaと一緒に覚えておきたい言葉が「Nakamal」です。
もともとは、人々が集まり、話し合いや儀礼などを行う伝統的な集会場所を指します。
現在ではPort Vilaなどの都市部で、「Kavaを飲む場所」「Kava bar」という意味でも使われています。
夕方になるとNakamalに人が集まり、Kavaを飲みます。
Kavaは「shell」と呼ばれる器で提供され、ココナッツの殻などが使われます。
Nakamalは、一般的なバーとは少し雰囲気が違います。
音楽を大音量で流して騒ぐというより、Kavaを飲みながら静かに過ごす場所です。
旅行者が訪れる場合も、その場の落ち着いた雰囲気を尊重するといいでしょう。

Kavaを初めて飲む場合は、現地の人に飲み方を聞きながら、少量から試すのが安心です。
島や村によってKavaのルールも違う

Kavaの飲み方やNakamalのルールは、バヌアツ全土で同じではありません。
島や村、地域ごとに異なるKastomがあり、Kavaの飲み方やNakamalへの入り方にも違いがあります。
一部の伝統的なNakamalでは、女性が入らない、あるいはKavaを飲まない慣習が残っている場所もあります。
特にタンナ島では、女性にとってNakamalがタブーとされる地域もあります。
一方で、Port Vilaなどの都市部や、旅行者向けの施設では、女性でもKavaを体験できる場所があります。
そのため、「バヌアツでは女性はKavaを飲めない」と一律に考えるのは違います。
大切なのは、その場所ごとのルールを尊重することです。
分からない場合は、現地の人やガイドに確認するのが一番です。
Kastomを象徴する文化はKavaだけではない

KastomはKavaだけではありません。
踊り、音楽、織物、木彫り、土地との関係、婚礼、豚、物語、村のルールなど、さまざまなところにKastomがあります。
なかでも興味深い文化の一つが「砂絵」です。
バヌアツの砂絵は、砂や火山灰、粘土の上に指一本で連続した線を描いていく文化です。
単なる装飾ではありません。
物語、歴史、儀礼、歌、農業技術、建築、親族関係など、さまざまな知識を記録し、伝える役割を持っています。
2008年には「Vanuatu sand drawings」として、ユネスコの無形文化遺産の代表一覧表に登録されました。
「絵を見る」というより、「知識を伝える方法を見る」と考えると、その面白さが分かりやすいです。
また、ペンテコスト島で行われる「Naghol(ランドダイビング)」も、よく知られているKastomの一つです。
島ごとに異なる文化があることも、バヌアツの大きな特徴です。
Tabu(タブ)とは?旅行者が知っておきたいルール

バヌアツを旅するなら、「Tabu(タブ)」という言葉も覚えておきたいです。
Tabuは、日本語の「タブー」に近い言葉です。
ただし、「やってはいけないこと」という意味だけではありません。
バヌアツでは、場所や物、知識、儀式などについて、「誰でも自由に入れるわけではない」「誰でも見たり使ったりできるわけではない」という制限を表すことがあります。
Vanuatu Cultural Centreでは、Tabuを「アクセスが何らかの形で制限されているもの」と説明しています。
対象になるのは、場所だけではありません。
名前、知識、口承、物、慣習、儀式などがTabuになる場合もあります。
旅行者として覚えておきたいのは、
「見られるから撮影していい」
「入れそうだから入っていい」
「聞いた話だから自由にインターネットで公開していい」
とは限らないということです。
特に村やKastomに関わる場所を訪れる場合は、現地のルールを確認してから行動するのが安心です。
写真や動画を撮るときも、分からなければ先に聞きましょう。
Kastomには、その文化を受け継いできた人や家族、コミュニティがあります。
旅行者が自由に消費できる「観光コンテンツ」ではありません。
その土地の文化を尊重しながら見せてもらう。
この感覚を持っておくと、バヌアツをより深く旅できるでしょう。
村を訪れるときに気をつけたいこと

難しく考えすぎる必要はありません。
基本は、「勝手にやらない」です。
村や住民を撮影するときには、事前に許可を取りましょう。
特に子どもの写真や動画は慎重に扱ったほうがいいです。
道沿いに生えている果物なども、誰かの畑や庭のものかもしれません。
勝手に取らず、ガイドや現地の人に確認しましょう。
Kastomをすべて理解してから旅行することはできません。
分からないことがあれば、確認すればいいのです。
Bislamaを少し覚えておくと、こうした場面でもコミュニケーションしやすくなります。

バヌアツの文化は「島ごとに違う」から面白い

バヌアツ文化を調べていると、「バヌアツ人はこういう暮らしをしています」と一つにまとめたくなります。
でも、それではバヌアツ文化の多様性を取りこぼしてしまいます。
バヌアツには83の島があり、100を超える地域言語があります。
島が違えば、言語も、歴史も、Kastomも違います。

島の位置や主要な島については、『バヌアツの地理と島|83の島・6つの州・主要な島をわかりやすく解説』で詳しく紹介しています。
ペンテコスト島ではNagholが知られています。

タンナ島にも独自のKastomやKava文化があります。

中央・北部の島々では、砂絵の伝統が受け継がれています。

つまり、「バヌアツ文化」という一つの文化があるというより、さまざまな島やコミュニティの文化が集まって、現在のバヌアツをつくっているのです。
まとめ|Kastomを知るとバヌアツの見え方が変わる
バヌアツの文化を理解するうえで、最初に覚えておきたい言葉が「Kastom」です。
Kastomは単なる昔の風習ではありません。
祖先から受け継がれてきた知識、土地との関係、儀礼、人間関係、社会のルールなどを含みながら、現在のバヌアツ社会にも生きています。
そして、KavaやNakamalは、その文化を知る入口の一つです。
さらに、砂絵やNaghol、Tabuなどを知っていくと、バヌアツが「南国の観光地」というだけではなく、それぞれの島に異なる文化が残る国だということが見えてきます。
旅行するときも、観光地を見るだけではなく、「この島では、どんなKastomが受け継がれているのか」という視点を持ってみると、バヌアツの旅がさらに面白くなるでしょう。

